心ときみの物語


八重とその夫が出逢ったのは38歳の時だった。
親の勧めでお見合いを繰り返し、それでも良縁には恵まれず。

両親や本人の八重も結婚はできないだろうと諦めていた時に出逢ったらしい。


「でも夫には先妻の子どもがいて。周囲には猛反対されたけど、それでも結婚したの。子どもはすでに13歳の中学1年生だった」

一番多感で難しい時期。その子を自分の子として育てようと覚悟したけれど、その距離はなかなか埋まらずに月日は流れた。


「私もね、色々と手探りだったの。だから間違いも失敗もした。あの頃は本当に目まぐるしくて自分でもよく覚えてないくらい」

「……その子どもは今どこに?」

「社会人になったのを機に家を出て、そこで知り合った人と結婚した。今は子どももいて幸せに暮らしてると思うわ」

「……思う?」

「夫が亡くなって。そこで繋がっていた関係もなくなってしまったから」

血も戸籍上も繋がりがなかった親子関係。

その距離が縮まらなかったこと。
一度もお母さんと呼んでもらえなかったこと。

それはすべて自分のせいだと八重は言った。