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それから数日が経って、進は穏やかな顔をして息を引き取ったと風の噂を聞いた。
もしかしたらその命の炎は消えていたけれど、
小鞠にもう一度会うために進が必死に繋いでいたのかもしれない。
「エニシさま見てください。こんなものを作ってみました!」
見違えるように住みやすくなった拝殿で、小鞠がなにかを持ってきた。それは黒く塗り潰された絵馬。
「イタズラしてんじゃねーよ」
「違いますよ!表の神社とこちらの神社の区別を付けるために用意したんです。これからエニシさまを頼りに依頼者の方が来た時に形となるものがあったほうがいいと思って」
小鞠は俺と違ってよく働く。
せっかく人の姿になれるんだからと、巫女の格好までして高嶺神社の掃除をしたり、社務所でお守りを売ってた時は我が目を疑った。
まあ本人は楽しそうだし、縛ることを言うつもりはない。
「あ!雨ですよ!エニシさま」
ガラッと扉を開けると、ポタポタと屋根をつたって水滴が落ちてきた。
そして小鞠はあの傘をさす。もうボロボロで何度も修理を繰り返して。傘をくるくると回しながら、いつも石段を見つめる。
小鞠の耳にも聞こえるのだろう。
軽快な足音を響かせて10歳の進が嬉しそうにかけ上がってくるその音が。
――『小鞠さん!』
あの日のように無邪気な笑顔がここにある。
そんな誰にも打ち明けられない悩みを抱えた依頼者を待ちながら結んで結び合って結び直して結び続けよう。
愛しい縁を心に閉まって、俺と小鞠は今日もこの場所にいる。
【・・・・END】



