心ときみの物語


その帰り道。夕焼けに染まる今の街並みを歩きながら、小鞠が俺に頭を下げた。

「エニシさま。本当にありがとうございました!あなたのおかげで進さんとまた会うことができました」

あんなに不安そうな顔をしていたのに、その顔は別人のように晴れやかだった。

「これでお前と俺の縁は終わりだな。といっても俺があの拝殿にいる限り狛犬との縁は切れねーけどな」

面倒くさそうに頭を掻いた。すると小鞠は小走りで俺の隣に並ぶ。


「エニシさまもなにか理由があって縁切りをされているんですか?」

「ふん。お前とはまだそれを話す間柄じゃねーな」

とりあえず小鞠の件が一段落すんで、俺の頭の中は夕飯のことばかり。腹へったなあ。なに食おうかな……なんて、呑気に考えていると。

「あ、あのエニシさま!」

突然小鞠が大声を出した。


「近所迷惑だからキャンキャン吠えるな」

「今日からエニシさまのお側でお手伝いしたいのですがダメでしょうか?なんでもします!だからなにか……」

もうただの狛犬に戻れないと言ったのは俺だ。

同じ拝殿に身を置くものとして、ここで断ったところでまた監視するような視線を送ってくることは容易く想像できた。

もう俺は人の形をした浮遊する存在にすぎない。だからとても似ている。


「エニシとして依頼者と一時的な縁を結ぶ以外は俺はもう新たに縁は作らないと決めている」

「……そう、ですか」

落胆する小鞠の声を聞きながら俺はスタスタと歩いた。そして……。


「でもパートナーとしてならいいよ。その代わり拝殿の掃除当番はお前だぞ」

すると小鞠はパアッと明るくなって、ニコリと笑った。

「はい!任せてください!」