「……ううっ……」
小鞠の罪が消えていく。
罪なんてなかった。あったのは互いに変わらない想いと感謝の言葉だけ。
「ありがとう小鞠さん。本当にありがとう」
「こちらこそですよっ。進さん、ありがとうございます。私ずっと進さんに返さなければいけないものが……」
あの台風の日。石像としてそこに立つだけの自分に傘を貸してくれた。
――『雨で冷たいでしょうから、僕ので良かったらどうぞ』
その優しさに小鞠も救われた。
関わりたいと思った。なにか恩返しがしたいと思った。そういう気持ちを進は与えてくれた。
苦しいだけのものじゃない。
それは忘れたくない、忘れてはいけない唯一無二のことだと小鞠はようやく気づけた。
「いいんですよ。〝それ〟は小鞠さんが持っていてください」
まだなにかも伝えていないのに進は全てを分かっていたかのような言い方をした。
「約束したでしょう?小鞠さんに困ったことがあったら僕が助けると。雨に濡れて風邪を引かないようにずっと僕の傘はきみが持っていてください」
そう、進は知っていたのだ。
小鞠が神社の狛犬だということを。そして、いつか小鞠が自分に会いにきてくれるのをその命の灯火を守りながら待っていたんだ。
「いつかまた神社に行くよ。今度は願いをしに行くんじゃなくてきみに会いに行かせてください」
進が変わらない顔で笑う。そして小鞠も応えるように同じ顔で。
「はい!いつでもお待ちしています!」



