心ときみの物語


ただの石像として、神社を守るだけの狛犬には戻れない。


「お前は進のために心を持ったのか?違うだろ。心があったから進に恩を感じた。たかが傘1本で、そのお礼を言うために同じ人間になっちまうほど、その行動に心が打たれたんだろ?」

「………」

「縁が切れても心を失うわけじゃない。だからお前は狛犬には戻れない」

最初からただの狛犬をやっていれば、こんな面倒な感情を持つことはなかったのに。

だけどそれを小鞠は求めてしまった。

きっと神社に参拝しにくる人々を見て悲しいことも嬉しいことも、そういう浮き沈みがある人間に小鞠は憧れたんだ。

羨ましいと自覚してしまったら、もうそこに心は生まれている。

「会いにいってみるか?」

「え?」

「あとから後悔するような縁切りは俺もできればしたくない。だったら自分の目で真実を知れ。それが一度縁に手を伸ばしたお前の責任だろ」

真実を知ってそれでも決意が変わらないのなら、その時は遠慮なく切ってやる。