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小鞠は80年前の出来事を俺に話ながら、ずっと瞳に涙を溜めていた。何度も言葉に詰まって、それでも伝える努力をしてくれた。
「そのあと通りかかった人に発見されて、進さんは病院へと運ばれました。その後どうなったのかは分かりません」
「会いにいかなかったのか?」
「……行けるわけないじゃないですかっ!」
小鞠の中に芽生えた罪。それは80年の月日が経っても消えることはなかった。
「それから私は一度も人の姿になりませんでした。なってはいけないと思ったんです。でもエニシさまがここにやって来て縁切りをしてくださると知って、こうして再び人の言葉を借りてお願いしたというわけです」
小鞠はずっと正座をしていて、それを崩すことなかった。真剣な目。もうこれを逃したらチャンスはないと、そういうすがるような強い目。
「進との縁を切って、それからお前はどうする?」
「……もう悩んだり苦しんだりするのには疲れました。進さんとの縁を切ったらまた心を持たないただの狛犬に……」
「お前は狛犬には戻れねーよ」



