心ときみの物語


雨に打たれながら倒れている進を見てはじめて恐怖を覚えた。意識を失っている進の体は重たくて、引きずることもできない。

『だれかっ……だれか助けてください!!』

小鞠は大声で叫んだ。

だけど気づいた。

自分の視線が低いこと。発声の仕方が違うこと。耳から聞こえるのは人の言葉じゃなくて『キャンキャン』という悲鳴にも似た犬の鳴き声だけ。

そう、小鞠の力が消えたのだ。

こんな時に限って、無力でなにもできない犬になってしまった。

『キャンキャン!キャンキャン!』

小鞠はそれでも叫び続けた。

自分はなにもできない。進を救うことも、人を呼びにいくことも、その雨を防いであげることすらできない。

情けなくて、情けなくて、情けなくて。

だけど泣くことができない体に、ただひたすら声を上げ続けるしかなかった。