心ときみの物語


『だ、大丈夫ですか?』

雨は容赦なくふたりの体を濡らして、体温が奪われていく感覚がした。それなのに進の体に触れるとものすごく熱くて。とっさに小鞠はその額に触れる。

『ね、熱があるじゃないですか……!』

『微熱は仕方ないです。それも症状のひとつですから』

『微熱ってレベルじゃ……』

きっと繰り返していた微熱に重ねて、急激な運動と雨でそれが悪化してしまったのかもしれない。


『と、とにかく急ぎましょう!私の肩に掴まってください!』

小鞠はその小さな体で進を支えた。進も迷惑をかけないように必死で歩くけれど、もう体力も限界で意識が朦朧としていた。

その様子に気づきながら小鞠はなんとか山の入り口までたどり着いて。見慣れた道に出た瞬間に進はズルッとその場に倒れこんだ。


『進さん!進さん……っ!』

いくら呼び掛けても、いくら体を揺すっても反応がない。

後悔していた。

治る保証なんてないのに期待させるようなことを言ってムリして山に登らせたこと。進の病がもう身体中を蝕(むしば)んでることは知っていたのに。

自分は進の病を悪化させただけではないのか。

本当に自分は進のためにやったことなのかと、
ぐるぐると頭の中で考えた。

人ではないくせに人のような扱いをされて友達ができて、そういう自分に浮かれていただけなんじゃないかって。

毎日毎日進の元へ通ったのだって、心配の他に誰かと話ができて嬉しいと舞い上がっていた感情は本当になかったのかと。