心ときみの物語


『この花の名前なんて言うか知ってますか?』

進は膝を着いて、足元にある花をちょんっと指で撫でた。小鞠が分からないと答える前に進は花を小鞠の耳元へ飾った。


『小手鞠(こでまり)って言うんですよ』

小さな白い花がまとまって咲いて、それが手まりのように見えることから小手鞠という名前になった。

『可愛い花ですよね。小鞠さんみたい』

『かか、可愛いですか?』

『はい。とても』

また小鞠の胸がぎゅっとなって。平常心を保つために『へへ』と笑うことしかできなかった。

『小手鞠の花言葉は……』

そう進が言いかけた瞬間。ふたりの頬に冷たい〝なにか〟が当たった。最初はポツポツと弱く。でも次第にバケツをひっくり返したみたいな大雨に変わった。


『い、急いで山を降りましょう!』

ふたりは同じ言葉を言って、その湿っていく地面を走った。登ってる時は薬草に夢中で気づかなかったけど、とても足場が悪くて真っ直ぐ走れない。

進は小鞠の手を引いて最初は一歩前を走っていたけど、だんだんと呼吸が荒くなって、ついには足を止めてしまった。