心ときみの物語



「縁とこんな風に肩を並べられる日がくるなんて夢みたい」

図書館を出てキャンパス内を歩くふたつの影。
幼い少女のような顔をする心春を見て俺は言う。


「俺と依頼者の関係は3日間だけって決めている。だから今日が最後だよ」

平気だ。情は移っていない。ただその懐かしさに浸っているだけのこと。夢は覚めて現実を突き付けられて、心春は歩く足を止めた。


「縁は私と会えて嬉しくなかった?」

「………」

俺は顔色を読まれないように必死だった。平常心を保つのは得意だ。


「そういう感情も肉体と一緒に消えたよ。俺は縁切りという役目をしながらふわふわと浮遊してる存在にすぎない」

「………」

「だから心春。俺のことなんて気にせずに早く良い人でも……」

そう言った瞬間、心春の手が俺に伸びてきて。
その指先が肌に触る寸前に俺はバッ!と後退りしてしまった。

なぜかバクバクと心臓がうるさい。

早く収まれ。
平常心を……平常心を保たないと……。

そんな俺の顔を見て心春は深く問わなかった。
その代わりあることを俺に言った。


「縁切りはあと1日だけ待って。明日……明日だけ私の最後のワガママを聞いてください」