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それから2年の月日が流れて、俺は今縁切りという仕事をしながらこの古びた拝殿に暮らしている。
「本当に好きだったんですね。心春さまのこと」
テーブルに置かれたお茶はすっかり冷めてしまっていて、小鞠がまたお茶を注ぎなおした。
心春が俺の前に現れたのは数時間前。裏絵馬にはたしかに水瀬心春、高嶺縁と名前が書かれていて、それは今俺の手元にあるのに実感がない。
「俺どうなった?記憶が飛んでるんだけど」
あの心春の姿が幻だったかのように思える。すると小鞠はため息をついてコトッと湯飲みを俺の前に出した。
「あのあと心春さまをこの部屋にご案内して。エニシさまは醤油のおせんべいを勧めながら心春さまが夢を叶えてカウンセラーになったことを『良かったな』って喜んでましたよ」
「……そっか」
本当に記憶がないけど、どうやら俺は普通に心春と接したようだ。
「でも心春さまが帰られたあとずっとぼんやりとしていたので、今やっと私も事情を把握したところです」
小鞠が珍しくパリッと醤油せんべいを食べた。
「なんでお前に昔話なんてしちゃったのかねえ」
俺も釣られてバリバリとせんべいを食いながら、少しだけ不適な笑みを見せる。
「誰かに聞いてほしかったんじゃないですか?
その誰がたまたま私だったというだけで」
「ふん」
たしかに少しだけ胸はスッキリとしていた。



