こんな俺でもそれなりに親孝行はしようと思ってた。
今まで自由なことをさせてもらって、甘えの許される環境を作ってくれたこと。
母ちゃんは旅行が好きだから年に1回ぐらいは好きな場所に連れていってあげて。親父は跡を継ぐのは自分が倒れてからでいいなんて言ってたけど元気な内に代替わりをして安心させてやろうって。
大きなことはできなくても、小さなことを沢山してあげたいと、こんな俺でも思ってたんだ。
親よりも子どもが先に死んでいくなんて、それ以外の親不孝ってあるんだろうか。
肩を震わせる母ちゃんに手を伸ばすことさえ、
今の俺にはできない。
「縁、きたよ」
そして大学が終わってすぐに心春が病室にきた。
心春は大学4年生になって、童顔のくせに最近は大人の女性らしい顔つきをする時がある。
衰えていく俺とは逆に心春は毎日毎日綺麗になっていく。
「今日大学でね、面白いことがあったの。小百合と美樹がねー」
人見知りで孤独だった心春が嘘のように、今じゃ沢山の友達に囲まれている。
「あ、ごめん。こんな話してもつまらないよね」
俺に気を遣ったのか話が途中で終わってしまった。
「なんで?話してよ。聞きたい」
「本当?じゃあ、もっと面白いのあるんだよ」
なにもない病室にパッと花が咲いたように心春の笑顔を見ていると癒される。
だけどふと、俺は心春になにかしてあげられたんだろうかって思う。
友達がいなかった心春に話し相手ぐらいにはなってやるなんて言って交流がはじまって。
思えば心春は友達も大学生活も自分の力でなんとかしてきた。その内に秘めた強さに惹かれて俺が好きになって。
もしも、付き合わなかったら。もしも無関係のままで終わってたら心春にこんな姿は見せずに済んだのにと、そう思わずにはいられない。



