心ときみの物語


俺が脳腫瘍なんてありえない。

そう思いながらも現実は残酷で、大学には休学届けを出して、気持ちが追いつかないまま抗がん剤治療がはじまってしまった。

俺の腕に付けられた点滴。そこからポタポタとゆっくり体の中に薬が入っていく。

副作用があることも、それがかなりツラいことも説明はされた。だけど想像していたものよりもずっと苦しくて、なんでこんなことをしなきゃいけないんだろうと、そればかりを考える日々。


「縁。差し入れ持ってきたよ」

心春に病気のことを伝えたのは告知をされたその日の夜。

なかなか連絡がこないと心配して電話をしてきてその時に。なんて説明したのか正直覚えてないけど『頭にピンポン玉くらいの腫瘍があってさー』と笑って言ったことだけは覚えている。


「食欲がないって言ってたからゼリー買ってきた。これなら食べられるかなあ?」

心春はいつも明るかった。

あんなに眉を下げてるのがトレードマークだったのに、それさえも最近は見ていない。