心ときみの物語



「……え?」

狭い診察室。真向かいには俺の検査をしてくれた先生。ライトが当たるホワイトボードにはこの前撮ったMRIの写真。

その白黒で本当に俺のものかどうかも分からない写真を指さしてもう一度同じ言葉を繰り返す。


「ここに大きな影があります。調べたら悪性の脳腫瘍でした」

一緒に検査結果を聞いている母ちゃんは信じられないと、口を手で覆っていた。

「え?俺が?俺が脳腫瘍?」

第一声はあまりに軽かった。

脳腫瘍って言葉ぐらいテレビやなんらかの知識で知ってはいた。だけど自分とは無縁だと思ってたし、それになったらどうなるのか、なんて知識は全くない。

「く、薬とか飲めばなくなるの?もしかして手術とか?」

知識はないくせに鼓動だけが激しく動揺していた。すると先生は再び影を指さした。

「縁くんはまだ若いので進行がかなり早いです。現時点では手術できないほど腫瘍は大きいです。まずは取り除けるぐらいに小さくしていく治療をしましょう」

そのあと、先生は色々なことを説明してくれたけど、まるで俺の視界は靄(もや)がかかったように真っ白で。その声すらほとんど耳に入ってこなかった。