心ときみの物語


そんな友人関係を続けて、心春もだんだんと大学生活に馴染めるようになった。なにか嬉しいことがあると『縁のおかげだよ』なんて言うけど、べつに俺はなんにもしていない。

心春の魅力に俺以外の人が気づくのは正直複雑だけど、それでも心春の笑顔を見るとそんな気持ちなんてどうでもよくなった。


「縁!ごめん。遅れちゃって……」

そして今日は心春と学校の外で待ち合わせ。大学がない日にこうして会うのは初めてだ。

心春は白いワンピースを着ていて、いつものように右耳だけ髪の毛をかけている。よく見ると小さな穴が開いていて、思わずそこに指先が伸びる。


「ひゃ……な、なに?」

触れる寸前で心春にビックリされてしまった。

「あーいや。ピアス開いてたんだと思って」

拒否られたのがちょっとショックだったけど、
そこは気にしないようにしよう。


「ああ、うん!高校卒業してなにか記念になることしたいなってその時に。でも右耳しか開けてないの。病院で開けてもらったんだけどあまりの恐怖で貧血に……」

「はは、貧血」

「笑い事じゃないよ!考えてみたら昔から血とか針とか苦手で……。だから勢いで開けたけど左耳はもうムリかなって」

心春と俺の距離は近い。

だけど、それは俺に対する警戒心がないからで。その一線を越えたら心春は俺を拒絶するだろうか。

恋愛初心者でもないし、過去に彼女もいた。それなりに経験はあるはずなのに心春には慎重になってしまう。


「あ、もしかしてここ?」

駅から暫く歩いて、ねずみ色のブロック塀に囲まれた大きな敷地が見えてきた。

「そう、ここ」