「縁は神様になるのが夢なの?」
「ぷ、あはは!」
あまりに拍子抜けなことを言うから笑ってしまった。
それで俺の心の紐もゆるんでしまい、神社の跡継ぎということを気づけば心春に話していた。
「えー縁ってすごい人だったんだね!」
「俺がすごいわけじゃねーよ」
それに神主が夢というわけでもない。
ただ時が来たらいつでもその道に進めるように準備はしておこうと思っただけ。
俺は本をパラパラとめくって、神道の種類や信仰の特色。神社の詳しい歴史やその道筋が書かれている小さい文字を見つめた。
「イラスト付きで分かりやすいね」
心春が本を一緒に覗いていた。その瞬間、ふわりといい匂いがして。べつに疚(やま)しい気持ちがあったわけじゃない。
だけど自然と胸の鼓動が速くなった。
「いつか見てみたいな。縁が神主さんになるところ。そしたら毎日参拝に行っちゃうよ」
そんな俺の気持ちも知らずに心春はまた能天気なことを言う。「うちは縁結びしかご利益ねーぞ」と、顔色を読まれないように平然を装った。
「うん。いいよ。一番私に足りないものだから。毎日通って固く結んでもらうんだ」
顔が好きとか、声が好きとか、性格が好きとか、好意を表す箇所はいくつもある。
だけど、そうじゃなくて。
心春のもつ雰囲気がとても居心地がよくて、惹かれていた。



