それからあんなに楽しかった病院生活が
苦痛に変わった

体を起こすことも困難になって
目も見えなくなって
存在する理由が分からなくなってきた

倉科桜さんの体だけど、
いっそ死んでしまった方が楽なのかな、
なんて思ってみたりもした
だけど、私の大好きな人達が悲しむのなら
絶対に死にたくないと思った


「倉科さん、今日から3日くらい雨が
続くらしいよ」
「桜姉、雨のせいで花がちっちゃったよ」
「桜が好きだった本読んであげるね」



たくさんの言葉が聞こえる
だけど、私はその顔を見ることも
体を起こしてその様子を見に行くことも
出来なくなった
その間、断片的な記憶の回復があるかと
言ったら何も無い
ただ、視力を失ってから何一ついいこと
なんてない








そしてある日


「倉科さん、今日は来客が来てるんだ」
入院してから、来たことのない来客

この出会いが私の記憶を
呼び覚ます鍵となった