幸せに浸る度に、苦しかった日々をときどき思い返す。


あの頃胸にわだかまっていたものは、もどかしさや緊張感じゃなかった。


もう少し差し迫った、息苦しいほど明確な苦さだった。


もうずっと疎遠で、距離を詰めかねて、名前もうまく呼べなくて。


あのままだったら、高校生が多分最後だった。


大学まで一緒にいたいと思うのはきっと贅沢すぎるだろう。


だから、どうしようどうしようって焦っていた。

諦めた方がいいのかなって、何度も悩んだ。


連絡先を削除しようとした。

隣にいられる放課後を、手放そうとしたこともあった。


……それでも、大切で苦しい恋をわたし一人で大切に抱え続けたのは、あまりにそうちゃんが特別だったからだ。


幼なじみで、初恋で、好きな人で。


あまりに、そうちゃんとの関係とか思い出とかばかりを大事にしていたかったからだった。