そうちゃんは知っていることを気配りしてくれているだけだ。


わたしが手を貸して欲しいと毎日のように頼んでいたから、覚えていただけ。


……でも、こういうそうちゃんの小さな手慣れた気遣いに、わたしはいつも何も言えなくなる。


こういうときの柔らかい笑顔とめっきり聞かなくなり始めた呼び名に、苦しくなる。


「そっか。ありがと」

「ん。どういたしまして」


布団を隣り合わせに敷いて潜り込んだそうちゃんに、そうっと手を伸ばしてわたしからつなぐ。


大きい手だ。


節が高くて、骨が分かるような、ごつごつし始めた手だった。


……あったかいなあ、と思った。


そうちゃんは体温が高いけど、そうじゃなくて。


優しい体温だった。


電車とかバスとかでは、他の人の体温は触れるとあったかいじゃなくて熱いになる。


気になるから、あまり触れないように縮こまってみたりする。


もっとはっきり言うなら、他人の体温は苦手なのだ。


そうちゃんの体温は全然苦手じゃなかった。


安心する。

泣きたくなる。


……それがどういう意味かなんて、明白だ。


もうずっと前から、わたしはそうちゃんが好きだって、知っている。