家に帰ると、いつものように手洗いうがい。しつこいようだけど、これは絶対に欠かさない。お金を触ったり、お釣りを渡す時に、客の手に触れたり、商品を直す時に、触ったり、自販機のボタンに触れたり……。いろんなものに触れている。そこに菌が死滅しないで生きていることを思うと、その菌が付着した手で部屋中の物に触れると考えると、ゾッとする。ごしごし洗う。



それからマイプライベートルームの一番奥にあるベッドにダイブ。しばしの沈黙。布団がふかふかしてて気持ちいい。このまま睡魔さんをもてなす準備を始めたいところだけど、さすがに着替えないで寝るのは、気持ち悪い。それに、最近の私にはやるべきことがある。



机の上の大学ノートを手に取った。開いてみる。すると、ムルソーさんからの返事が書かれていた。相変わらずの達筆で、書道か、ボールペン字講座でも習っていたんじゃないかと思うほど、教科書のお手本に出て来そうなほど上手な字。よく男の人で、婚姻届けを書く時に、初めて相手の字を見て、丸っこい字で幻滅するなんて話を聞くけど、ムルソーさんならいつ結婚しても大丈夫だと思う。いや、ひょっとしたら既に結婚しているのかもしれない。子供もいるかもしれない。もっと言えば、ムルソーさんが男だって確証はない。



でも、なんとなく男だって気がする。そうであってほしい。