「あ、け、て」
口パクで合図すると、カチッと鍵が開く音がして窓が開く。
待ってました、と言わんばかりにさっそく部屋に入る。
そして、荷物をカーペットの上に適当に置く。
「ねえ、窓から入ってこないでっていつも言ってるじゃん」
心底不愉快そうに俺を見つめるその瞳。
クールでいつも冷静なくせによく見ると綺麗でぱったりとした瞳。
気を許すとすぐに吸い込まれてしまいそうだ。
「わりぃわりぃ。昔からの癖」
俺とミナの部屋はお互い行き来できるような距離で
玄関から入るよりも窓から出入りする方が断然早い。
「てか、お前が五分以内とか言うからだろ」
「怪我したら元も子もないでしょーが。ほんとバカ」
呆れながら言う彼女のその呆れ顔は俺はもう何十回もみたことがある。
きっと、まだ俺が知らない顔をするミナがいる。
でもそれを見れるのは俺じゃないんだろうな。
「心配してくれてんの?今日はやけに優しいな」
「うるさい!ほら、やるよ!」
そう言うとお菓子などが置かれた机の上の前に行ってテキストを荒々しく広げる。
少し動揺しながらほんのと顔を赤らめながら言うミナに俺はつい頬が緩む。
ほんと、可愛すぎて困る。



