私の前に差し出される男らしくてゴツゴツとした大きな手。
その手を取ることはせずに黙って斗樹の隣まで歩いた。
「ふっ…マジで可愛いな」
そんな私を見て、差し出していた手を引っ込めて何を思ったのか“可愛い”なんて言い出した。
「ニヤケんな、キモい」
ハメられた……。
斗樹の罠に完全にハメられたのが悔しくて、恥ずかしくて、その恥ずかしさを隠すかのように斗樹へと暴言を吐く。
「照れ隠しってやつね。
そんなことも可愛くてしょうがないな」
「そんな事言っても好きにならないからね」
「上等だな。でも、そのうち
お前は俺のことが大好きで仕方なくなってる」
なんでこんなにポジティブな頭してるんだろう?
バカすぎるゆえになのかな?
ちょっとそのポジティブさを私にも分けて欲しいぐらいだよ。
「はいはい。
ほら、早く帰らなきゃもうすぐテストだし」
テスト一週間前に昨日入ったばかり。
欠点を取らないためにも必死で勉強しなきゃ。
私は斗樹よりも先に歩き出す。
慌てて斗樹も私の隣に来ては同じ歩幅で歩いてくれる。



