「それなら、俺だって帰りたい」
炭谷くんも負けじと斗樹の言葉に反論する。
だけど、斗樹は懲りる様子もなく
私の肩を抱き寄せ見せつけるように言った。
「俺以外の男と帰らすわけには行かねぇ。
つーか、そんなの俺が許さねぇし」
な、な…っ!!
なにその発言は…!?
聞いてるこっちが恥ずかしくなって…密着してる体にも意識がいって顔がだんだんと熱を持っていくのが分かる。
いくら斗樹でもこんなこと言われたり、されたりしたらドキドキしてしまうのは仕方ないと思う。
顔はいいわけだし。
ついでにイケメンボイスという分類に入る声だし。
「もっと訳が分からないんだけど?」
「だったら、わかるように言ってやる。
ミナは俺と帰るからお前はさっさと帰れ」
シッシッ、と手首を動かして炭谷くんに「早く帰れ」とでも言うように指示するような動作をする。
もう…ほんとにコイツはそういうのは失礼ってことが分かんないのかな?
「……分かったよ」
諦めたようにぽつり、とそういうと炭谷くんはクルリと反対方向を向いて歩き出した。
炭谷くんの姿が見えなくなったぐらいに私はハッと我に返った。
左側に感じる体温…それは斗樹のもので。
未だに肩を抱いていて、ドッドッドッと私の心臓が脈打つのが早いのが嫌でも分かる。



