「ほら、早く」
そんなに急かされても全くと言っていいほど正解に近いような言葉が出てこない。
あ、分かったかも。
「斗樹のバカ」
綺麗に五文字。
完璧じゃない?
というか、こんなことを斗樹は言わせたかったの?
「はぁ?お前の頭マジで使えねぇな」
呆れたように深いため息混じりで言う斗樹。
あんたにだけは言われたくないってば。
「じゃあ、正解は?」
「あ、り、が、と、う。だっつーの
何が『斗樹のバカ』だ?ふざけんな」
あぁ、なんて簡単な答えだったんだろ。
なのに私はその答えが出てこなかった。
きっと、斗樹になんてお礼を言うことが少ないからだろうなぁ。
なんて、ぼんやりとした頭で考える。
「…ありがとう」
「おう。
でも、間違えた罰として土曜日俺とデートな」
「…今なんて?」
超スマイルでえげつないことを
言ったような気がするんだけど……。
「だから、土曜日は俺とデートな。予定入れんなよ」
「あ、その日はあいにく予定が…「そんなの断っとけ」
はぁ?!
何が断っとけよ、この俺様野郎め!!
特に予定もなかったけど、行きたくないから嘘をつこうとしたのにその返答はありえないから…!!