そのおかげで、幼なじみである私にまでその噂の餌食になり
“実は男好き”だとか“斗樹とそういう関係になっている”だとか根も葉もない噂を流され、大変だった。
「うーわ、自慢にしか聞こえなーい」
ムスッと表情を歪ませて耳を塞いで声が聞こえないようにしている。
「斗樹といてもいいことなんてないからね」
「あ、見て!斗樹たちの試合始まるよ!
次勝てば決勝じゃん!!きゃー!頑張れ!」
後ろからそんな女子たちの黄色い声が飛び交い始めた。
体育館の二階にいる私たちは下でバスケをしている斗樹たちの様子が見渡せる。
もちろん、ここにいるのは私だけじゃない。
自分の彼氏や斗樹たちを一目見ようと二階には女子たちがまるでデパートのセールのときのように群がって場所を取り合っている。
そのせいで、さっきからグイグイと体が後ろから押されている気がする。
前が手すりだから体が当たって痛いんですけど…。
「斗樹くんってバスケ上手いよね」
両頬に手を当てながら、うっとりとした表情で斗樹を見つめている來未。
「まあ、アイツはバカだけど運動神経は抜群だからね」
騒がしい後ろやさっきから強く押される体を我慢して來未と斗樹たちのバスケを観戦する。
手すりに頬杖をついて、ぼーっとコートを見ていると一瞬こちらをみた斗樹と目が合ったような気がした。
でも、試合前だからなのか何も言わずに逸らされ彼たちの試合は開始された。



