私は炭谷くんのことが好きだったわけだし。
付き合った時も…斗樹は隠れて泣いてたっけ。


「こんなの後から言っても意味無いかもだけど
私、ずっと斗樹のこと好きだったと思うの。

でも斗樹は私のことなんて好きになってくれないって勝手に思い込んで、好きになっちゃいけないって思うようになって…だから昔の記憶も閉じ込めてた」


こんなのただの言い訳にすぎないけど。
目に映る綺麗な景色を観ながら、そっと自分の想いを声にする。


「炭谷くんのことは好きだったけど、私が今
斗樹に抱いている気持ちの大きさが全然違う」


「…ミナ」


「やっぱり、斗樹に敵う人なんていないんだって思い知らされたよ」


上手な伝え方がなんなのかなんて分からないけど、これが今の私に言える精一杯の想いだ。
恥ずかしくてもう『好き』なんて言えないけど。


「斗樹は私にとって必要不可欠…んっ」


斗樹が泣くのをやめて私の唇に自分の唇を重ねたから私は言葉の続きが言えなくなってしまった。


「ちょ…」


苦しくなって斗樹の胸をトントンと叩くけど斗樹はやめてくれない。
ちょっと…!私は酸欠なんですけど!


「はぁ…はぁ…私、斗樹に嫌われてると思ってた」


散々、斗樹のこと傷つけちゃったし。
嫌われてもおかしくないもん。


「俺がお前を嫌いになると思ってんの?」


「だって…」


「もういいから」



斗樹は私の手をそっと握り、満面の笑みを私に向けた。





「これからは幼なじみじゃなくて
彼女として、俺の隣にいろよな」


十年ほどの時を経て今日からプレイボーイだった幼なじみの彼女になりました。


いつか、彼女じゃなくて
斗樹のお嫁さんになれますように。