「なに?」
「止まれ」
「は?」
「いいから、止まれ」
斗樹の顔から冗談なんていうふうには感じられなくて
ただ、真剣みを帯びた表情で私を見つけている。
「イヤだよ。
斗樹、速く走らないと炭谷くんに負けちゃうよ」
「そんなの後から追えばいいだけだろ。
つーか、話そらすな」
斗樹の真剣な瞳は私のことをしっかりと捉えて離さない。
額から流れる汗が妙にかっこよく見えてしまうのはいつもとは違う顔つきだからだよ。
「逸らしてなんか…ってちょっと!」
「ふざけんな」
なかなか止まろうとしない私に痺れを切らした斗樹が無理やり私の腕をつかみ、走ることをやめさせた。
そのとき直感で分かった。
きっと、斗樹にはバレてしまったんだろうな。
洗ったおかげでシミも薄くなっていたのに…どんなに隠そうとしても斗樹には見抜かれているらしい。



