「や、やめようよ…言い合いは…。
私はどっちの彼女でもないから……ね?」
もうこれ以上、二人の言い合いは聞いていられなくてやっと言葉を発せた。
「ごめんね、南帆ちゃん。
じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。バイバイ」
炭谷くんは少し悲しそうに眉を下げてそう言うと一度手を振り帰っていった。
残されたのは私と斗樹の二人だけ。
なんか…気まずいんだけど。
こういう時に限って斗樹は何も言葉を発さないし
さっきから何を思っているのか私と目も合わせようともしない。
「斗樹?どうしたの?」
「…ん?あぁ…何でもねぇよ」
「絶対ウソだ。私にはわかるんだからね」
その憂いを帯びた瞳を見れば私じゃなくても
誰でも何かあるかぐらいはわかると思う。



