「送っていくよ」
「え?いいよいいよ。
炭谷くんが遠回りになっちゃうから」
斗樹なら家が隣だからともかく炭谷くんと私の家は遠いはずだし。
これ以上、迷惑をかける訳にはいかないもん。
「いいんだってば。
俺はちょっとでも長く南帆ちゃんといたいんだから」
「…あ、ありがとう」
その炭谷くんの言葉が素直に嬉しくて
ドクンドクンと心地いいくらいの鼓動の音が耳に届く。
せっかくだからお言葉に甘えて送ってもらうことにした。
なにか特別なことを話すわけでもなくてただ他愛のない話をしながら楽しく家の前まで送ってもらった。
「あれって……」
話が盛り上がって笑いあっていたときに炭谷くんが笑うのをやめて驚いたように声を発した。
私もそれにつられるようにしてそちらに視線を向けるとそこには私の家の壁にもたれかかって立っている斗樹がいたのだ。



