でも、斗樹はそんな私でも許してくれる。
どんなに冷たくしても八つ当たりしても持ち前の優しさで私をさりげなく慰めてくれたり、褒めてくれる。



「そうなの?じゃあ、俺が一番のりだ」


「そういうことになるね」


「嬉しいな。俺にも南帆ちゃんのことで
一番になれることがあるなんてさ」


「え?どういうこと?」



本当に嬉しそうに笑う炭谷くんの隣で私はその言葉の意味を分からないでいた。



「南帆ちゃんには幼なじみくんがいるじゃん。
きっと、彼が一番南帆ちゃんことを知ってるだろうなって思ってて俺が一番になれることはないと思ってたから」



「斗樹は幼なじみでも私のこと全然知らないよ。
私も斗樹のこと全然知らない、知らないことだらけだよ」



そう、知らないことだらけなの。
斗樹は知らない間に私の知らない斗樹になっていた。


分かるのは好きな食べ物とか嫌いな食べ物。
そんな簡単なことぐらいで。