「ちゃんと聞かなきゃテストやばいよ」



「次のテストやばかったら
教えてくれなかったお前のせいにする」



「はぁ?」



斗樹のことは前からバカで意味不明なことをよく言うな、とは思っていたけどここまでだったとは。



なんで、私のせいにされなきゃなんないのよ。



「嫌なら教えろ」



こんなの半分脅しじゃんか。

こういうときだけは頭が働くんだから。



「消しゴム落としたから拾ってもらっただけ」



教えてやったんだから、もうどっか行け。オーラを放ちながら黙ってお弁当を食べ進める。



「……はぁ?もしかして、それだけ?」



耳に届いたのは気の抜けたような斗樹の声。


でも、表情は心なしか安堵に満ちていってるような気がする。



「だから言ったじゃん。

てか、彼女ができたなら学校では極力話しかけてこないで」



さっきから女子たちの視線が痛いほど突き刺さっている。


その中には斗樹の彼女もいて、恐ろしいほど睨まれているのも分かっている。


さすがに身の危険を感じた私は斗樹にこう言うしかなかった。



「何いってんの?それこそ意味不明。

俺たち幼なじみだからいいだろ?」



幼なじみとかそういう問題じゃないんだってば。


私の言葉が気に食わなかったのかさっきの安堵の表情から一転し、どんどん険しくなっていく彼の表情。



「そういう問題じゃないの!!」



私は少し大きな声で彼にそう告げて食べかけのお弁当を机の上に残して教室から飛び出した。



ほんと少しは私の気持ちも分かってよ。


彼女ができたならその自覚を持っていい彼氏にならなきゃいけないでしょーが。


イライラを落ち着かせてから教室に戻ってもその日は斗樹とは一言も話さなかった。