「だーから、朝…アイツと話してただろ?」
アイツって誰?
ちゃんと、名前で言ってくんないと分かんないし。
「何モジモジしてんの。気持ち悪い」
私から視線を逸らすくせにまたすぐに視線を合わせてくるという意味不明な行動をしている。
「あー…もう…!!
隣のヤツと楽しそうに話してただろ!?
何話してたんだよ…!」
いきなり、声の大きさが上がったから私は肩がピクッとなった。
隣のヤツ…?
あ、あの消しゴムを拾ってくれたけど少し不思議な彼のことね。
「急に大きい声出さないでよ。
それで、そんなこと聞いてどうすんの?」
斗樹は私があの人と話していたことを聞いてどうするわけ?
斗樹が聞いて得するような内容でもないし、むしろ時間の無駄だと思うんだけど。
「どーもしないけど……」
また、急に発する言葉に勢いが無くなり終いには黙り込んでしまった。
「なら、いいじゃん」
私はそんな彼の様子を特に気にも留めず、お弁当のおかずの卵焼きを口の中に放り込む。