「南帆〜、今日斗樹くんと花火大会行くんでしょ?
せっかくだし甚平着ていく?」


リビングでソファに腰を下ろして約束の時間までくつろぎながらテレビを観ていたらお母さんがキッチンから話しかけてきた。


斗樹と一緒にカレーを作ったキッチンで……色っぽい斗樹や不安げな斗樹。
斗樹が初めての顔をたくさんしたあの日だ。


あの日から斗樹はやけに機嫌がよくなっちゃって
私と一緒にいてもニコニコと嬉しそうに笑うことが増えたような気がする。


そのせいで、炭谷くんからの告白も保留のままにしてしまっている。


そんなことをしても怒らないで『ゆっくりでいいからね』なんて言ってくれる彼は本当に優しい人だと思う。


私も早くOKしてお付き合いしたいのに
何故か、斗樹のことを考えてしまってなかなか答えを伝えることが出来ない。


何でだろう…?
答えなんてずっと前から決まっているのに。