そう思い、荷物をまとめて部屋に戻ろうとしたら
ぐっ、と腕を掴まれてそちらに視線を向けると俺の腕をミナが強く掴んでいた。
しかも、目を閉じたまま。
コイツ…寝ぼけてんのか?
腕を離そうとすると、ミナは顔を歪ませて
「行かないで……っ。……くん」
そう呟いた。
名前は聞こえなかったけど多分炭谷の名前だろう。
俺のことは斗樹って呼び捨てだからな。
そう冷静に考えているのに炭谷のことばかり考えているミナがむかついて仕方ない。
「俺、帰るから」
起きているのか、寝ているのかよく分からないけど一応帰ることは伝えておこう。
そう思ってもう一度ミナの手を離そうとしたら
今度はぐいっと引っ張られてバランスを崩した俺はミナのベッドに入ってしまった。
「…んんっ……置いてかないでよ…とっくん」
は……?
一瞬、自分がおかしくなったんじゃないかと耳を疑った。
だって、“とっくん”というのは
昔ミナが俺のことをそう呼んでいた名前から。
お前は一体どんな夢を見ているんだ?
お前の頭の中に少しでも俺が……いる?
突然のことにドクンドクンと高鳴る心臓の鼓動はなかなか鎮まらなくて、結局一睡もできなかった。