そんな言葉を聞いて思わず、胸がぎゅっと締め付けられる。


さっきまでは甘かったくせに急にしょんぼりなんてしないでよ。


なんか、私が悪いことをしてるみたいじゃない。


「…伝わってないこともない」



きっと、ドライヤーの音でかき消されるだろうと思い本音をぽつりと吐き出すと俯いていた斗樹の顔が弾けたようにあがって、心底嬉しそうな瞳と視線が絡み合う。


少し視線をずらせば、男らしい斗樹の体が視界に入り、落ち着いていた心臓が再びうるさいぐらいに騒ぎ始める。



「マジで言ってる?」


「…マジだってば!
何回も言わせないでよ、恥ずかしいなぁ!」



ムキになって、わしゃわしゃと斗樹の髪の毛を乱す。
だけど…それは逆効果だったかもしれない。


だって、わしゃわしゃとかき乱したせいでシャンプーよ匂いが鼻をかすめる。
嗅ぎ慣れたはずのシャンプーの香りすら、初めて嗅いだような感覚に陥ってしまう。


斗樹が…斗樹が使っているからだ。
うるさかった心臓が更に騒ぎ出して体中が沸騰したように熱くて、


まさか自分がこんなに斗樹にドキドキするなんて思ってもなくて戸惑いが隠せない。