「顔なんか赤くしちゃってさ、俺のこと意識してんの?」
「し、してないし…!バッカじゃないの…!!」
「嘘つきだな。だって、今顔真っ赤だもん。可愛いからキスしてもいい?」
き、キス…!?斗樹ってこんなに積極的で甘かったっけ?
また、私の知らない斗樹が目の前にいる。
ドクンドクンと早鐘を打ち始める鼓動を隠すかのように黙ってドライヤーのスイッチを再びONにして仕方なく斗樹のサラサラの髪の毛を乾かす。
「…怒った?」
「別に…斗樹がチャラいのは今に始まったことじゃないもん」
「俺はミナしか興味無いんだけどな。なんで伝わらないんだろう…押しが足りねぇのかな」
ぽつり、と呟いた彼の言葉はすぐにドライヤーのうるさい機械音にかき消されたけど私の耳にはしっかりと届いていた。