「え…!?私は一人でも…「俺が心配だから無理」
“一人でも大丈夫だから”
その言葉は斗樹の強引なセリフによって遮られてしまった。
その後、斗樹は一旦家に帰って必要なものを取りに行き、数分で戻ってきた。
そんな彼の頭はどしゃ降りの雨によって濡らされ、ポタポタと毛先から水がカーペットに落ちてシミを作る。
「髪の毛、濡れてるよ」
私はそう言いながらタオルを手に斗樹の髪の毛をワシャワシャと拭く。
このまま、風邪ひかれても困るのは私だし。
ていうか、そうなったら罪悪感が半端ない。
「んー、もっともっと」
「甘えないでよ、気持ち悪い」
こっちは仕方ないから拭いてやってんのに。
いや……少しはほんのちょっとだけ“こんなずぶ濡れになってまで来てくれてありがとう”という気持ちも込めて。
「ドライヤーも。ミナ上手いから」
「先にお風呂入ってきなよ」
そっちの方が早い。
二度もドライヤーしなきゃいけなくなるなんてそんな手間のかかることはしたくないもん。
「一緒に入る?」
「なっ…!ば、バカじゃないの…!?早く入ってこい!変態!」
斗樹の言葉は冗談だと分かっているのにどうしても顔が熱くなってしまうのは男の子慣れしていないから。
斗樹からしたら何でもない冗談なんだろうけどね。
きっと、何十回もそんなムカつく冗談を他の女の子にも言ってラブラブしているんだろう。
何故か想像しただけでイライラしてくるよ。



