「……付き合うなよ。
よそ見なんてしねぇで俺だけ見てろよ」
上から斗樹の本音がぽろりとこぼれ落ちてきた。
私はそれを見ないフリして、でも実際はちゃんと心で受け止めていた。
「俺の恋に終わりなんてねぇんだよ。
俺は、叶わないって分かっててもお前が好きなんだ」
ドクンッドクンッ、と鼓動が激しく音を立てて速くなっていくのが分かる。
「プレイボーイのくせに……」
また、思ってもないことを口にしてしまう私は相当最低で性格も悪い。
「ずっと、ずっと、昔からミナのことが好きだった」
「嘘つき…」
「嘘じゃない。
俺の目にはいつだってミナしか映ってなかった」
「じゃあなんで…!」
「叶わないって分かってたからっ…!
そんなの最初から分かってたから…
他の女をミナと無理やり重ねてたんだよ」
そう、やるせなさそうに吐き捨てた斗樹。
なによ、それ……。
私に無理やり重ねてたなんて…知らないよ。
そんなこと今更言われたって知らないよ。
私は炭谷くんと付き合うんだよ?
「アイツのとこなんて行かないで…っ。ずっと俺のそばで…たとえ幼なじみとしてでもいいから居ろよ」
弱々しい斗樹の声に決断が揺らぐ。
もう、振り続けているうるさい雨の音もカミナリの音もどれも耳になんて入ってこなくて、入ってくるのは斗樹の声だけ。



