『ミナ…!?』
「ご、ごめんね…!じゃあね!」
それだけいうと急いで電話を切った。
だってカミナリを怖がっているだなんて知られたくない。
スマホを机の上に置いて、カーペットの上に体育座りをして俯く。
もう…最悪だよ、早く鳴りやんでよ。
「ミナ…!!」
あれ?私は夢の中にいるのかな?
だって、斗樹の声がするんだよ。
いるはずのない人の声が聞こえたと思ったら前から丸めた体をギュッと包み込むように抱きしめられた。
「え……?」
この柔軟剤の匂いは……
「と、き……?」
なんでいるの?しかも、少し服が濡れてる。
ということは、また窓から侵入してきたんだね。
ほんと不法侵入だからね…でも、来てくれてありがとう。
「一人で怖いくせに強がんな、ブス」
「ぶ、ブス…!?」
「もう大丈夫だから。怖くない怖くない」
ブスと言われて怒っているというのに斗樹が心底優しい顔してよしよし、と私の頭を撫でる。
不思議なことにさっきまで恐怖で怯えていたのに全く怖くない。
それはこの高鳴る鼓動の音がうるさすぎるカラなのかもしれない。
「俺がそばにいてやるから」
ねえ、どうしてあんたはそんなに優しいの?
私に対して怒ってないの?
「……」
私は結局何も言えなくて、このもどかしい気持ちを隠すかのように斗樹の胸に顔を埋めた。
すぐ近くから彼の鼓動の音が聞こえてきて、それはものすごい速さで動いていて、ほんとに私のこと好きなんだなって思った。



