「顔を引きつらせるなんて、そんなに俺には会いたくなかった?」



あ、れ……。
また心の中を読まれてしまったの?



私としたことが、完全に不覚だった。




一瞬でも隙を見せれば、その間に全てを読み取ってしまうのがこの人の怖いところ。



何を考えているのかもわからないから、正直言って本当に会いたくなかった。




「そんなわけ、ありませんよ」



こんな嘘が通じるなんて思ってはいないけれど、社交辞令として一応言っておこう。



でもやっぱり、彼に嘘は通じない。




「……さっき、『げ』って言わなかった?」



ほら、出たよ。
その表面的な笑み。



怖すぎて背筋が寒くなる。