あとがき    矢野 亮介

この作品は友人の恋人から「自分が死んだらこれを小説にしてほしい」と生前託されたと受け取ったことがきっかけでした。

そして、彼の遺書も託されました。
それは元恋人であり、僕の恋人への恋文でした。
僕にも読んでほしいと言っていたそうです。


麻耶へ

病気になってさえいなければ今も君の隣にいられたかもしれないのに、そんなことを心のどこかで思っています。

君の隣で笑っていたかった。
そして、平凡でいいから、君と普通の毎日を送りたかった。
でももう叶わないだろうと思っています。

もう一度できれば君に会いたい。
そして、できればそれは矢野の妻としての君であってほしい。


涙で恋人の顔がにじんでぼんやりとしてるけれど、彼が優しく笑ってることだけはわかった。

「アイツに会いに行こう」

うなずくと、彼は強く抱きしめてくれた。



~fin~