「これ、帰ったら読んで」 いつもは”俺の著した物は読まないでほしい”と言っている彼が珍しく私に手渡したのは一冊の文庫本だった。 ベッドに入ってから、数時間前に受け取ったそれをバッグから取り出す。 タイトルは『君の隣』。 男女の後ろ姿が描かれたきれいなイラストの表紙をめくった。 これって……。 読み進めると、ある男性の日記をもとに綴られた恋愛小説だとわかった。 そして、その主人公の恋人だった女性、それは紛れもなく私だった。