「!」



私達の目の前には銀色の髪に漆黒のマントを身にまとったクロウがいた。


心底驚いたように目を見開いてこちらを見ている。



「…なぜお前達がここにいる。」



ぽつり、と、無意識に出たような彼の声に、ラントが、さっ、と剣を構えて威嚇した。



「それはこっちのセリフだ…!お前こそ、俺たちを始末しに来たのか?

殺るって言うなら、相手になるぜ…!」



すると、クロウはすっ、と目を細めてラントに答える。



「…自分の“家”に帰ってきて何が悪い。

そこをどけ。お前らに構っている余裕はないんだ。」



…!



クロウの言葉にラントと私が、はっ!としたその時

クロウが、ぐらりとよろめいた。



…ポタ…



その瞬間、クロウの足元に赤い滴がこぼれ落ちる。


あれは…“血”…?



ぞくり、と体が震えた。



「あなた…怪我をしているの…?」



「…………。」



クロウは、私の質問には答えずに歩き出す。


すっ、と私のラントの横を無言で通り過ぎた彼は、私が荷物を置いている部屋に入って行った。



「どういうことだ…?」



ラントが眉を寄せて呟く。


私は、そんなラントに向かって答えた。



「さっき、部屋でクロウの写真を見たわ。

彼はきっとこの城の騎士で…今もここに住んでいるんだと思う。」



「え?」



ラントが目を見開いたその時

ガタン!という大きな物音が奥の部屋から聞こえた。






今のは…



私は、嫌な胸騒ぎを感じて走り出す。



「!おい、セーヌ!」



私の名を呼ぶラントの声を背中に、私はクロウの入って行った部屋に飛び込んだ。



するとそこには、ソファに倒れこむクロウの姿。


荒く息をしながら苦痛に顔を歪めている。



「クロウ…?!」



私は、咄嗟に駆け寄った。


すると、クロウは私を拒むように腕で振り払いながら低く言う。



「…近寄るな…俺に触れたら斬る…!」



「!」