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「うーん…さすが、“呪われた城”だね。

雰囲気あるな。」



アルの声が、静かな城に響く。


城の門をくぐると、そこはノクトラームの城とは別世界だった。



…蔦の絡まる城壁。


雑草は好き放題に伸び、花は枯れたまま。


所々 崩れている階段のヒビに足を取られそうになる。



ロッド様が城を見上げながら呟いた。



「俺たちも呪われてる身だし、ちょうどいいな。」



「…呪われてるのはロッドだけだろ。

まぁ、ノクトラームの歴史的建造物に泊まれるなんて、ある意味 運がいいかもね。」



アルがどこかワクワクした様子でロッド様に答えた。


すたすたと前を歩く年長者組。

二人の後を続くようにして、私とラントは並んで歩く。


すると、ラントが眉を寄せたまま小さく私に声をかけた。



「…なんかここ、“ゆう”で始まって“れい”で終わるモンが出そうだよな。」



「うん。確かに、幽霊出そうだね。」



「ばっ、ばか!!その名を口にするんじゃねぇ!

こういう話をしてると寄ってくるっていうじゃねーか!」



…ラントが言い始めたのに。



こそこそと会話をしていると、くるり、と後ろを振り返ったロッド様が口を開いた。



「なんだ、二人とも怖いのか?」



「「えっ!」」



つい、声が重なった私とラントはロッド様から目を逸らした。


ラントが動揺しながら答える。



「べ、別に怖くなんかないですよ?

俺、お化けとか信じてませんから。」



ふっ、と笑うロッド様の横でアルが私に尋ねた。



「セーヌさんは大丈夫?怖くない?」



私は、アルに向かって苦笑しながら答える。



「…す、少し怖いですけど大丈夫です。

一晩くらいなら、どうにか。」



すると、それを聞いたアルがにっこり笑って言った。



「よかった。僕はこの機会に城を歩いたり書庫を見たりしたかったんだ。

セーヌさんが大丈夫なら、一人部屋でも平気だね。」



っ!



…港町の旅館みたいに、同室じゃないってことよね。


好奇心が溢れている様子のアルに、私はぎこちなく頷いた。