「随分、城から離れた所まで来ましたね。」



港町を発ち、草原を進む私達。

ラントの言葉に、ロッド様は地図を広げながら答えた。



「あぁ、そうだな。

もう荒れ地は目の前だ。」







もう、国の外れまで来ていたんだ…!


確かに、旅を始めてから結構な時間か経った。


もう、ノクトラームの城は姿さえ見えない。



その時、アルが苦笑しながら口を開いた。



「でも、大変なのはこれからさ。

荒れ地に近づく方法を見つけなくてはいけないからね。」



え…?



私がきょとん、とすると、ロッド様が私に地図を見せながらアルに続けた。



「荒れ地に行くには、関所を通らないといけないんだ。

だが、恐らくジャナルによって俺たちはそこで足止めされる。」



…!



確かに、国の政治を取り仕切る大臣なら、関所で私達の通行を規制することなんて簡単なことだ。



「関所を通る以外に道はないんですか?」



私の言葉に、ロッド様は地図を見つめて答える。



「荒れ地の周りは切り立った崖や高山に囲まれていてな。

関所を避けるとなると、山を登るのに一ヶ月はかかる。」



い、一ヶ月も…?!



今の私達に、悠長に山登りをしている時間なんてない。


すると、アルが前を向きながらさらり、と言った。



「…でも、一つだけならあるんだ。

関所を避け、なおかつ最短距離で荒れ地に向かう方法が。」



「えっ!」



アルは意味深に笑みを浮かべながら呟いた。



「まぁ、うまく通れるか分からないんだけどね」



…?


どういうこと…?



一度立ち止まった私達は、ロッド様の持つ地図を覗き込んだ。

アルが“一点”を指しながら口を開く。



「ここが大体の現在地。この先、道なりに歩いて丘を越えると、荒れ地の一歩手前に“城”が見えるんだ。

もしかしたら、そこに荒れ地に通じる“隠し通路”が存在するかもしれない。」



“城”…?


ノクトラームの領地に、他のお城があるの?



「城なんてどこにあるんだ?

地図に載ってないよな?」



ラントの言葉に、アルは眉を寄せて答える。



「そこは、“人々から忘れ去られた城”だからね。城主のいない古城は、今では廃墟だ。

ここの土地は数十年前にノクトラームの領地になるまでは隣国扱いだったんだよ。」