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「っ?!」



ぐいっ!と、ロッド様に手を引かれる。


私はそのまま、ロッド様の腕の中に飛び込んだ。



…ぎゅう…!



力強い感触が体を包む。



…っ、だ、抱きしめ……っ!



その時、耳元でロッド様の低く艶のある声が聞こえた。



「…悪い。…“こっち”でもいいか…?」



…!



その言葉に、私は体の力が抜けていく。



な、なんだ…


体が辛いから早く浄化したいってだけか…。



そうだよね。


ロッド様が意味もなく私を抱き寄せることなんてないよね。



…入って来た時から、“会いたくて来た”なんて言うから、緊張しちゃった。


ロッド様はいつもと同じなのに、私だけ意識しちゃって恥ずかしい。



深い意味のない行為だということは、お互いの共通認識のはずだ。



私は、おずおずとロッド様の背中に腕を回しながら声をかける。



「…どうですか?

少しは楽になってきましたか…?」



ロッド様は、無言で頷く。



…よかった。



…それにしても。

今までも魔法を使わない状態で呪いが進行することはあったけど、こんなに苦しそうにするなんて初めてだ。


まさか…浄化の力が追いつかなくて、気づかないうちに呪いが体を蝕んでいるんじゃ…。



私は、ロッド様を抱きしめ返しながら彼に尋ねた。



「ロッド様、痣を見せてください…!

もしかしたら、さらに範囲が広がっているかもしれません。」



「!」



…広がっていなくても、色が濃くなっていたら大変だ。



私が体をよじって、ロッド様の胸元を確認しようとした

その時だった。



…サラ…



「っ!」



いきなり、ロッド様が私の後頭部に手を回した。

彼の指が髪の毛を絡める。


痣を確認する前に、くいっ、と上を向かされた。



「…!」



反射的に体に力が入る。


整った顔が至近距離に近づき、綺麗な碧眼が私をとらえた。



「…ロ…ロッド様…?」