え?


私は、きょとん、として彼女を見上げる。

すると彼女は、手に持っていた本を勢いよくベッドの上に放り投げた。

分厚い本が、ベッドの上で弾む。



え、え?

“口実”って?


って言うより、今、思っていたより低い声が聞こえたような?



その時、目の前の彼女が急に私の腕を
がしっ!と掴んだ。

私が目を見開いた瞬間、彼女はじぃっ、と私を見下ろしながら口を開く。



「お前の名はセーヌ。歳は二十。性別は女。本人で間違いないか?

…呪いを浄化する力を持ってるんだよな?」



「え?」



到底メイドとは思えない口調に、私はたじろぐ。

メイドの鋭い視線に、私は動揺しながら答えた。



「はい。そ、そうですが…」



すると、その瞬間

メイドの檸檬色の瞳が、らん!と輝いた。







私が、はっ!としたその時

彼女が私に向かってまっすぐ言い放った。



「頼みがある。

お前の力で、ロッド団長の呪いを解いてくれ
…!」



「え…?」



私が、軽く裏返った声を上げた瞬間、彼女は私の腕をつかんだまま、ぐいっ!と引っ張る。



な、なに?!



半ば強引に椅子から立ちあがらされた私は、メイドに引っ張られるがままに歩き出す。



「ちょ、ちょっと?!」



私が慌てて声を出すと、彼女はこちらをみないまま答えた。



「いーから。城の奴らにバレる前にここを出るぞ。

団長の呪いを解いてくれたら、もう用はねーから。お前は早く元の国へ帰れ。国境までは送ってやる。」



「え、え?!待って!どういうこと?!」



今までのメイドさんと態度が違いすぎて、私はどうすればいいのか分からない。


動揺して、つい敬語も忘れてしまう。



っていうか、この人、強引で力強すぎ…っ!

私、まだ返事もしてないのに!



「あの、私、大臣からこの部屋から出ることを禁じられているんだけど…!」



「ハゲの言うことなんか無視しろ、無視。

あいつは団長に呪いをかけた上、王を騙してこの国の実権を握ろうとしてる、とんでもねー悪党だ。」



ハ……ゲ


って、それよりもまず、今なんて言った…?



私は、力一杯メイドの手を振り払って、彼女に向かって声をかけた。



「待って!騎士長って、地下牢に繋がれているとんでもなく悪い人なんだよね?

今の話、詳しく聞かせて………」



と、私が言いかけた次の瞬間

メイドが私の言葉を遮って、すごい勢いで口を開いた。



「お、お前!ロッド団長が悪い人なわけねぇだろ!!

“騎士長”なんて呼び捨てにすんな!“騎士長様”って呼べ!」



「っ…!」