「あ、あの…体調はどうですか?」


何とか話題を変えてみる。



「…あぁ、だいぶ楽になった。今日は魔力を使いすぎた分少し辛かったが、姫さんのお陰で助かった。

…だが、やはり、すべてを浄化しきれるわけではないようだな。」



…!



私は、ロッド様の言葉に、はっ!とした。

ロッド様の胸の痣はまだ消えていない。



…ここまでやっても、すべてを浄化しきれないなんて…。



すると、ロッド様は何かを考え込むように黙り、そして少しの間の後、口を開いた。



「もしかしたら…俺の体に触れて浄化出来るのはこれが精一杯で、ジャナルの持つ魔力を奪わない限りこの呪いの根源は消えないのかもしれないな。」



「確かに…そうかもしれませんね。」



これほど体に触れているのに、すべてを浄化出来ないのは初めてだ。


私は、すとん、と体の力が抜けた気がした。


…ということは

私に出来るのは、これまで通り、ただロッド様の呪いを浄化し続けることだけってこと…?



「…すみません、ロッド様。

あまりお役に立てなくて…。」



私がそう呟くと、ロッド様は、ふっ、と笑って口を開いた。



「そんな顔をするな。

俺は、呪いを浄化してくれるだけで十分だと言っただろ?」



優しい瞳で私を見つめるロッド様は、穏やかな表情を浮かべていた。



…ロッド様は、すぐにでも呪いを解きたいはずなのに、私に気を遣って笑ってくれている。


戦えない私の盾になって傷つくことも、これからたくさんあるかもしれない。



私は、じっ、とロッド様を見つめ返して口を開いた。



「…私は、ロッド様を絶対死なせません。

ロッド様が私を守ってくれる代わりに、私はロッド様の命を繋いでみせます。」



「…!」



私の言葉に、ロッド様は小さく目を見開いた

そして、微かに目を細めて私に答える。



「ありがとな。俺も、姫さんを命懸けで守ってみせる。

姫さんに本物のティアラを付けさせる、って約束もしたしな。」



あ…、そうだ。


確かに、城を出た日にロッド様にシロツメクサの花冠を貰って、そういう約束を交わしたな。


あの花冠は、私のバッグに今でも大切にしまってある。