私は、すぅ、と息を吸い込むと、再びロッド様の唇を塞いだ。


さっきよりも長く、柔らかな感触を感じる。



…痣が消えるまで、キスを続けてみよう。



私は、そのままの姿勢で目を閉じたまま考える。



…ど、どうかな…?


ロッド様、楽になってるのかな?



その時、私は致命的なミスを犯していることに気がついた。



ま、まずい…っ!


この体勢じゃ、ロッド様の胸元の痣を確認出来ない!


いつやめればいいの…っ?



「………ん……っ…」



重なる唇の合間から、声が漏れた。



も…もう少しかな……?



と、私がぎゅうっ、と手でシーツを掴んだ

その時だった。



「……っ?!!!」



突然、ロッド様が私の唇を甘噛みした。

と、同時に柔らかい舌が唇に触れて、私は驚いてキスを止める。



な、な、な…っ?!!



動揺してまばたきをしていると、ふっ、とロッド様の瞳が開かれた。


体が硬直すると同時に、彼の碧眼がまっすぐ私をとらえる。



その時、低く艶のある声が、荒い呼吸混じりに部屋に響いた。



「…姫さんは…俺を殺す気か………」



っ!!!



色気の帯びた瞳が細められ、私は咄嗟に口を開く。



「ご、ごめんなさい……………………っ!!

っていうか、お、起きてたんですか?!」



私の言葉に、ロッド様は腕で目元を隠しながら答えた。



「…すまない。悪いとは思ってたんだが、姫さんの善意に甘えて寝たフリをしていた」



「いっ、いつから?!」



「部屋の向こうで、廊下の軋む音が聞こえた時から。」



それって、私が部屋に入ってくる前からじゃないですか!


さすが、ノクトラームの騎士長様!

寝込みを襲われても、隙がない………


って、違うっ!!



私は、かぁっ!と赤く染まる頬を手で覆いながら、何も言えずにロッド様を見つめていた。


ロッド様は、小さく呟く。



「……死ぬかと思った……」


「ご、ごめんなさい…。」



じゃあ、ロッド様が急に私の唇を甘噛みしたのは、窒息死する前に私のキスをやめさせるため…?


無意識にキスに応え始めたわけじゃないんだよねっ?


は、恥ずかしすぎる……っ!!


いくら謝っても、足りないよ…っ!!