え…!



私は、ばっ!とラントの方を向いた。


そして、彼に向かって尋ねる。



「ラント、まさか一人で行くつもり…?」



「あぁ。港町で王子と合流したら、その足で荒れ地に向かう。

セーヌはロッド様の呪いを浄化し続けなきゃいけないだろ?」



ラントはそう言い切ると、覚悟を決めたような表情でツリーハウスを見つめていた。


その時、私の脳裏に地下牢での光景が浮かんでくる。



…ロッド様が閉じ込められていた地下牢の部屋は、通路や扉にまで呪いの呪符が張ってあって、強力な魔法陣によって侵入者を防いでいた。


国外れの荒れ地が同じようになっているとすれば、浄化の力を持たないラントと王子様が行ったところで、王様達に会うことすら難しいはずだ。


無理に入ろうとすれば、呪いを受けて命を落としかねない。



ここで、ラントだけを行かせてはダメだ。



私は、大きく深呼吸をして目を閉じた。



…決めた。

“アレ”をやって、賭けるしかない。



「ラント。」



「ん?」



ラントの声を聞き、私は、すっ、と目を開けて言葉を続けた。



「…大丈夫。ロッド様は、必ず私が目覚めさせてみせるわ。

ラントだけに体を張らせるわけにはいかない…!」



「え?」



ラントは、状況がつかめない、と言った様子で声を出した。


私は、そんなラントに背を向けて、ツリーハウスへと戻って行く。



「お、おい?お前、何をするつもりだ?」



「私に出来ることは一つしかないわ。

ただ、呪いを浄化するだけよ。」



私は、自分に言い聞かせるようにしてラントに答えながらツリーハウスのはしごを上った。



…迷っている場合ではない。



私だって、守られているだけじゃダメだ。



覚悟を決めてツリーハウスへと入っていく私の後ろ姿を、ラントは首を傾げながら見つめていたのだった。